法務通信―新時代― Vol.2
コロナがこんなに長期化するとは誰しも思わなかったのではないでしょうか。このほど政府はやっと5月8日からの5類移行を決めました。マスクは個人の判断にゆだね、医療費は公費負担を当面継続するが、ワクチン接種等公費支援は今後検討するといいます。やっと隔離閉鎖的な生活から解放されると思いましたが、このウイルスは季節性がなく、いつでも感染リスクがあり変異もあるから厄介です。
さて、今月は、事故や病気など増加する医療費の負担義務を考えてみたいと思います。
交通事故と損害賠償
昨日、今日と日本海側中心に大雪大寒波に見舞われ、交通機関は運休混乱し各地の道路は大渋滞となりました。日ごろ当り前に動くと思っていた交通機関が混乱すると思わぬ災害に出会いますね。特に、車の場合、雪道での普通タイヤは事故が多発します。普段降雪のない所では、冬も普通タイヤでの走行が常態化していて大変かもしれません。
誰も、「自分だけは交通事故に遭わない」と思っています。しかし、交通事故は主に運と確立の世界ですから、運悪く、交通事故の被害者になったら気も動転しパニック状態になります。「ケガは、完治するのか?」、「仕事を休まざるを得なくなるが、生活の保障は?」など、交通事故の知識がないと途方に暮れ、加害者の言いなりになるかもしれません。

さて、民法には、知っていて助かる規定もたくさんあります。たとえば、このように交通事故に遭い仕事を休んだ場合、その間の治療費や生活費がかかったとします。これは、民法709条の不法行為の問題です。709条に「故意、又は過失によって、他人の権利または法律上の利益を侵害した者は、これによる損害を賠償する責任を負う」という規定です。これにより相手方に治療費や生活費等、損害賠償請求権を行使することができます。
損害賠償時の自賠責保険と任意保険
突然の事故で被害者あるいは加害者になった場合、「人身事故」と「物損事故」があります。人身事故の場合は、自賠責保険は適用されますが、物損事故には適用されません。その場合に、まずお互いの過失(落ち度)の割合を決めなければなりません。これを「過失相殺」といいます。たとえば、信号のない交差点で出合い頭に衝突しました。物損事故で双方の合わせた損害が100万円とします。一方が優先道路の場合、過失割合を7対3としますと損害賠償は、過失の高い方は70万円、相手方は30万円という損害額になり、普通は差額がやり取りされます。
人身事故の場合は、まずは「治療費」の請求、仕事を休む「休業損害」の請求、そして、精神的損害の「慰謝料」となります。自賠責の場合の慰謝料は人身事故だけに適用されますが、愛犬の慰謝料はダメです。治療費は、ケガの場合、死亡の場合で異なりますが、それぞれ120万円、3、000万円が限度です。それ以上の請求に対しては、任意保険で対応しなければなりません。しかし、相手方の保険は自賠責のみで余り収入もない、という場合は、示談交渉はまず難航します。裁判に訴えるしかないでしょう。