法務通信―新時代― Vol.5
さて、新年度がスタートして早や一か月、学校や職場がガラリと変わった方が多いと思います。特に学生の皆さんは18歳成年法が施行され1年、今まで長年20歳成年に慣れてきたので戸惑いを覚えますね。今回はその改正の概要を見ていきましょう。
140年ぶりの民法大改正
まずは、18歳になれば、親の同意なく結婚ができます。親権に服さなくてよいということです。ただ、18歳といえばほとんどは高校3年生の途中で成年に達するから学校や教員の対応に相当の配慮が求められることになります。そして、成人式も大学入試と重なり、日程や方法等の見直しが必要になりますね。
本来、人の成長は個人差があるのでそもそも法的に成年と未成年に分けることは不可能ですが、法の目的は判断能力が不十分な者を保護するという大前提があるわけです。また、20歳成年は、世界で日本とニュージーランドの2か国だけだったということも改正の背景にあるでしょう。
とにかく、18歳をもって法的な責任が問われる主体になるということですから、18歳になれば、親の同意なく自らの判断で自由な結婚や契約をすることができますが、その自由な「権利」を取得する半面、結果に対して責任を負うという「義務」も付随してきます。未成熟な思慮分別による判断能力をフォローする少年法や児童福祉法・消費者契約法など他の法律はたくさんありますが、成年の法律行為は、民法その他私法の上で完全な行為能力者とみなされるので、結婚など契約等には細心の注意が必要です。

民法と結婚
さて、18歳が成年であるとすると、親など親権者の許可なく高校生同士の結婚も成立します。そして婚姻の手続きは簡単です。民法739条1項は「婚姻は、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その効力を定める」と規定しています。つまり、形式さえ整っていれば、役所に届け出れば婚姻の効力が認められるのです。婚姻届は、外国では自分で署名・届出をしなければなりませんが、日本では自ら届け出ないで他人に届出を依頼しても、それが有効とされています。たとえば、意気投合して付き合い始めた恋人同士の彼氏に新しい恋人ができて別れ話が持ち上がった。怒った彼女は腹いせに彼氏に無断で婚姻届を提出した。
こういう事例の場合、彼氏には「婚姻の意思」がなく、彼氏の同意なく届出をされているから無効(民法742条)とされますが、このままでは、戸籍上彼女と結婚状態にあるので、これを解消するために、彼氏は、調停や婚姻無効の訴えを起こさなければならない。
すなわち、身勝手な男に捨てられた彼女が、一時の感情だけで役所に婚姻届を出し、受理されてしまえば、結婚は成立するのです。18歳成年法は、これまで付与されていた「未成年者取消権」を行使できないので知らなかったでは済まされないですね。
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