強行規定と任意規定

法の不知は許さず
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法務通信―新時代― Vol.6

先月、自転車のヘルメット着用がすべての人に努力義務化されました。髪型が乱れる、人目が気になるなど、いろいろあったようですが、法律ではこの努力義務は「○○するように努めなければならない」という「任意規定」のことです。基本的に違反した場合の罰則の適用はありません。今回は、このことを考えてみましょう。

強行規定と任意規定

 法律の条文には、強行規定と任意規定があります。強行規定の法律は数多くありますが、たとえば、刑法の「窃盗罪」で考えてみましょう。スーパーで万引きをした場合、「お金がなかった・・」「でき心で・・」など、言い分があるでしょうが、理由によって、免罪になるということはありません。当事者の意思にかかわらず適用されるのが強行規定です。これは、社会の秩序の安全・安心を図るためであるから、刑法や道交法など公法に数多くの規定が該当します。私法である民法の、物権法や家族法の中にも、このような強行規定が存在します。

 一方、任意規定は、法律に規定はあるものの当事者の意思が優先されるというものです。

 たとえば、マンションのお隣同士のAさんとピアノが趣味のBさん、「夜の10時を過ぎたらピアノを弾かないこと」という契約を結びました。これは私人間の合意で成立した自由契約ということになりますね。

 ある晩、Bさんは新曲に熱中するあまり、10時以降も弾き続けました。契約違反ということになりますが、逮捕されて連行されるなどという罰則はありません。それは、債権者であるAさんと債務者であるBさんの当事者優先の自由契約だからです。

隣人トラブル

法の不知は許さず

 これは、古代ローマの法格言です。すなわち、“殺したいから殺した”“お金がなかったから盗んだ”など、人の生命・財産や精神的に損害を与えた場合、「何も知らなかったから許してくれ!」とはならないということです。そうしなければ法の実効性を確保し、平穏で安全な社会秩序を維持できないからです。例外を除き、たとえ法律を知らなかったとしても「法を犯す意思がなかった!」とすることはできないという格言です。

 社会生活において、善良な市民を守るためには、このように強制するルールと良心に訴える寛容なルールとのバランスが必要だということになります。しかし、残念なことに人間には複雑な利害得喪や感情の動きなどがありますから、つい、でき心でとかうっかりミスなど知らないうちに犯罪行為に入っていることがあります。また、分かっているけどやめられないと、何回も万引きや空き巣など同じ行為を繰り返してしまう人もいるわけですね。つまりは、バランス感覚を失っているということでしょう。

 社会生活で最も大切なものは、ことの内容をよく理解し、決まったルールを守り、相互の信頼関係の上に各人が義務を果たせばトラブルなしの世界に近づけますね!

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