法務通信―新時代― Vol.16
転がる石はコケ(付加価値)を付ける
今月は身勝手な天候に振り回されながらも、やっと春めいてきた感じがします。まもなく4月ですが、学校を卒業して新入社員として多少の不安に駆られながらも心ワクワクもあるのではないでしょうか。そして、就職はしたがどうも自分のイメージや期待していたものとは違う。こんなはずではなかったとつい今の職場を変えようという人、また、意に反して会社を去らなければならない人などそれぞれの思いがあるでしょう。
昔は、「石の上にも3年」と仕事を忍耐強く続け、終身一つの会社で働くという考えが主流でした。時代の変遷とともに人生100年時代となり、今はキャリアの成長、興味や情熱の追求などで転職する人が増えて、昔のように一つの職場に一生を捧げることは難しくなってきました。また、定年がどんどん延長されて同じ職場で40年・50年と長期にわたって仕事をすれば飽きたりマンネリに陥ったりします。
さらに、時代は加速度的に変化し戦争や災害、AIの進化で昨日まで安定していた会社も今日から赤字に転落ということも珍しいことではなくなるでしょう。転職はそれらのリスクを避けるためにも、また、現在の仕事や職場に働き甲斐やキャリアの成長が望めない場合、一度しかない人生を一つの会社で仕事をすることはあなたの可能性を奪い、他の仕事をする経験を失うことになります。
ただし、人それぞれですから当然一つの職場で努力を重ね自身のスキルアップ、才能を開花させることもあるわけですが、国や企業はこのほど、副業を認めましたから会社員として働き続けながら副業や学び直しで自らの可能性を探る力を養うこともできます。そんな時間はないという方もおられると思いますが、自分に向いたもの、好きなことには思いのほか時間のやりくりはできるものです。
話は変わりますが「転石コケむさず」という諺があります。これは住まいや仕事を絶えず変えている人間にロクな者はいないという意味で、コケとはお金のことを指していました。要するに、動かないで同じことをずーっと続けなさいということです。
しかし、日本の経営環境は大きく変化しています。これまでは終身雇用・年功序列でしたが、バブル経済の崩壊を機に企業の経営環境が悪化、グローバル化がどんどん進み、今までの終身雇用や年功序列制度では対応できないという認識が広まりました。 特に、中国などとグローバル市場での競争において、個人の能力や実績に基づく評価が重視されるようになりました。
また、女性の社会参加、非正規雇用の増加などが従来の雇用慣行を見直す契機となりました。総合的にこれらの要因が転職を促しているわけですが、新しい職場で新たな技術や情報に接し、転職が“コケ”という付加価値を高めることで転がる石はプラスのイメージとなります。仕事の面でも人付き合いでも時の流れに乗って臨機応変に先を読み常にスキルを磨く人は個人の働き甲斐やキャリアアップを手にすることができるでしょう。まずは、自らの可能性を探るため、心から好きなことに取り組むのが最も自己実現につながります。