法務通信―新時代― Vol.24
働き方改革と勤労感謝の日の再構築
みなさんこんにちは。行政書士の佐藤勝太郎です。最近は天候の寒暖差が大きくて自律神経が乱れます。原因は地球温暖化と言われますが、こうした状況は日本だけではないようですね。特に、都市部ではヒートアイランド現象により、夜間でも気温が下がりにくくまた冷やされると逆の現象で、寒暖差が顕著に感じられる場合があります。
さて、今月11月は、「勤労感謝の日」がありました。勤労感謝の日は、日本では古来の農耕文化に由来し、収穫に感謝する「新嘗祭」がその起源となっているそうです。戦後、1948年に現行の祝日法が制定され、勤労を尊び、生産を祝い、国民が互いに感謝し合う日として定められました。
しかし、他の祝日と比べて具体的なイベントや伝統行事が少ないため、国民の印象として薄いのは否めませんね。勤労とは、広辞苑によれば「心身を労して努め励むこと」とあります。日本人は世界の中で最も勤労に富む国民と言われてきましたが、この祝日があったからでしょうか。日本の「勤労感謝の日」は、他国の労働に関する祝日と比較して、労働運動や権利向上の政治的な色合いが薄く、感謝や収穫に焦点を当てている点がユニークです。戦後の新憲法の理念に基づき、勤労の尊さを称える一方で、より平和的かつ非対立的な性格を持っていますね。
「勤労感謝の日」という名前の祝日を持つのは日本特有ですが、労働に感謝し、労働者の権利や努力を称える日は、世界のさまざまな国でも存在します。ただし、その背景や意味合い、祝われ方にはかなり違いがあります。類似のものはメーデーで、これはヨーロッパ諸国を中心に労働者の権利を唱え、労働条件の改善を求めるための祝日ですが、労働者としての権利の主張が目的です。日本の勤労感謝は働くことに喜びを感じ収穫に感謝するという、権利そのものより働く義務が根底にあります。法律の世界も権利と義務の世界ですが、どちらにウェイトを置くかによって祝日にも国民性の違いが出てくると思われますね。
ところでみなさんは、今政府が進めている働き方改革を知っていると思いますが、これは労働環境の改善と多様な働き方の実現を目指しています。
まずは長時間労働が規制され、テレワークも増えました。しかし、賃上げや労働時間の短縮など制度的な改革は進みますが、職場のソフト面のハラスメントはなかなか改善されません。最近は、地位や立場を利用して「何度言ったら分かるんだ!」と机をドン!や「性的嫌がらせ」など問題化するケースが相次いでいるので、厚労省が法改正の検討に入りました。ただ、法整備が整ったとしても罰則がなければ実効性に課題が残ります。
たとえば、執拗な上司のいじめ・嫌がらせを受け退職に追い込まれて訴訟になったとしても、録音や写真などの日常的な証拠集めや客観的にみて業務上必要かつ適正な指導ではなかったなどの立証も難しいです。裁判に勝ったとしても賠償金は思ったより少なく現場復帰も大変でしょう。働き方改革は職場のハード面、ソフト面が充実して、労働者一人々が「自分らしい働き方」を追及できるのが理想ですね。