「庭木の功罪」から見る隣人トラブル

台風
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法務通信―新時代― Vol.10

いつまで続くかと思った暑さもやっと朝晩はしのぎやすくなりました。これから本格的な紅葉の季節を迎えるわけですが、台風もやってくるので心配です。
気候変動による自然災害以外にも様々な事件、事故が起きる現代は、昔のような季節感や世相も変わりつつありますね。今回は、台風などの被害に係るお話です。

庭木の功罪

 暑さをしのぐため、窓際に花やゴーヤ・ヘチマなどで緑のカーテンを作る場合があります。キュウリなど野菜の場合は、食べきれなくなるので花などと組み合わせてカーテンにするとよいですね。日陰を生じる庭木や生垣があればそれなりに潤いや癒しを与えてくれます。しかし、樹木の場合は成長してかなりの大木になるものもあります。管理をしていない樹木は、枝が伸びすぎて路上にはみ出し交通標識などが見えなくなったり、街灯も隠れて夜の灯蔭を生じたりします。このような場所は交通事故が起こる危険度が増してきます。そこで、民法では、土地の工作物等の責任として、樹木が道路上にはみ出し、事故などが発生した場合には、その所有者の責任を問うています(民法717条)。

 さて、今まで経験したことのない強い台風が来たとしましょう。電柱や樹木が次々になぎ倒されます。倒れた樹木が隣のBさんの家や車に大きな損害を与えた場合、樹木の所有者Aさんは“台風の仕業だ、俺に責任はない”とはいえません。ただし、Aさんが樹木が倒れないよう適切な処置をしていた場合には、責任を免れる場合があります。

庭木の適切な処理

相隣関係

 「遠くの親戚より近くの他人」ということわざがあります。何か急を要することが起こった時など頼りになるということですが、なかなかそうもいかないようです。たとえば、余り近しくなって遠慮がなくなるとケンカが起きたりします。それをきっかけに疎遠になったりしますが「親しき仲にも礼儀あり」で垣根を作っておくと、意外と関係は長続きするようです。

 また、お隣同士はよく境界でもめごとにもなります。隣との境にある木の枝が自分の敷地まで伸びてきたり、その根っこが伸びてくる場合もあります。侵入してきた木の枝は、自分で勝手に切ってはいけません。ただし、竹木の所有者に切除の催告をしても効果がない場合や台風など急迫の事情があるときなどは自分で切り取れます(民法2333条1項)。もし、竹木が柿の木だった場合、柿の実を勝手に取ってはいけません。その果実の所有権は隣人にあるからです(民法89条)。

 また、たまに隣の大木の根が自分の敷地に伸びてきた場合には、勝手に自分で切り取ることができます(民法233条2項)。このように、隣との関係にも民法は大きく関わっていることが分かります。

 最近は、隣り合わせになる国と国とがその境界をめぐってよく紛争を起こしていますね。隣というのはこうしてみると、何らかの問題を抱えている危険な位置かもしれません。乗り物に乗るときも、空いているならなるべく他人から離れてすわります。見えない垣根があるのでしょう。それでも人間はいろいろな隣人なしには生きられませんね。

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